空蝉箱饅頭入り

饅頭怖いのでお持ち寄り下さい。

公女と少年。

「お嬢様。本日はどちらに」

「ワタクシの事は大丈夫ですよ。お父様やお母様は、お兄様達が跡を継ぐ事を望んで居ます。その証拠に…」

「その様に卑下為さらないで下さい。私目の使命は、お嬢様。貴方のお世話をする事です」

「大丈夫ですよ。ばぁや。人間、そんな簡単には死なないのです」

侍女の制止を振り切り、公女は扉を開き上げ、駆け足で歩き出す。

「お嬢様!……毎日の様に城を抜け出し…それでは余計に…」


【1】


「ばぁやの言いたい事は分かるのですけど…。城に…ワタクシの居場所は…」

朝はまだ早い。どこを見ても公女以外の人は、ほとほと見当たらない。雨の翌日だからだろうか。どこか物悲しい雰囲気を醸し出している。その時不意に、カサカサと草葉の陰が揺れた。

公女は驚き本意興味半意で草葉の陰に目を凝らす。すると葉の下に様々な色の双眼が見て取れた。

「動物さんですか?。雨はもう止んだのですょ…?」

正体の見えない双眼を捉える為に草葉を掻き分け、中を覗いた時、紅い瞳が警戒する様にこちらを見遣るのが分かる。獣のする事なら普通なのだが、瞳と称するに値する、凛とした眼の人間…の様な動物…の様な子供が隠れて居たのだ。

「……

公女を訝しむ一人の子供は生気の抜けた、だがどこか凛々しく、強い精神力を感じさせる瞳で公女を見詰める。

「どうしたのですか?。迷子ですか?」

どこか気品の有る薄汚れた服装の黙りこくったままの子供。中性的だが服装からして、仮に少年としよう。その少年に、公女は静かに手を差し伸べた。

「握手」

「あく…しゅ…?

初めて口を開いた少年の声は、女性の様に高く、それで居て少し嗄れて居た。

「初めまして。これからよろしくね。って意味なのですよ」

「はじめまして…?

差し出された掌に、ビクビクしながら視線を向ける少年。彼の手を目指し、公女は更に腕を伸ばし、彼の手を握る。

「そうです。これでもう、ワタクシ達は友達ですよ」

「…トモダチ……

「そう。友達。ワタクシは蜃と言うのですよ」

「白描……

「白描。こんな所に隠れて無いで外で遊びましょう?」
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  1. 2014/08/30(土) 09:59:26|
  2. 設定、SS文庫
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